香川県高松市の小児科・アレルギー科・小児循環器内科 医療法人社団裕心会 あきた小児科クリニック

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青空がのぞく診察室から

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2017年10月21日

続・未来への贈り物

前回に続き、『抗微生物薬適正使用の手引き(第1版)』について少し触れてみます。手引きでは、総論に続いて急性気道感染症と急性下痢症について詳細に書かれています。急性気道感染症の病型としては、感冒(いわゆるかぜ)、急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎に分けて考えられており、病型や年齢、発熱の持続期間などの症状に応じた抗生薬の適正使用について論じています。

一方、急性下痢症については、ウイルスが原因と思われる場合と細菌が原因と考えられる場合に分けて記載されていました。急性下痢症の診断および治療の手順というフローチャートもありました。今回出されたこういう手引きだけでなく、各学会で出されるガイドラインもあくまでも一つの一般的な目安であり、それを参考に各医師の経験や考え方を加味して、望ましい治療につなげていきます。

抗生薬ではありませんが、以前はよくその病院独自の約束処方というのがよくありました。たとえば『K1』『K2』『G1』とかの名称をつけて、『K1』には咳止め(鎮咳薬)と痰切り薬(去痰薬)、鼻水止め(抗ヒスタミン薬)がセットで入っていて、『K2』はそれに気管支拡張薬も入っているといった感じです。下痢の薬としての『G1』なら整腸薬と下痢止め(止痢薬)があらかじめ混合されていたりしたものです。しかし、抗ヒスタミン薬は鼻水や痰を粘くしてしまうし、眠気を中心とした副反応もあります。また、下痢に対して安易に下痢止めを使ってしまう危険性もあります。そういった意味で、約束処方の安易な使用も考えものです。いずれにしても、抗生薬に限らず医薬品を適正に使用するためには、漫然と処方するのではなく、ある程度診断名を考え、その診断に基づいて薬を出していく必要があります。

地球温暖化が進行すれば、病気の地域性も変化し、病原体の威力なども今以上に増悪していく可能性が高いのです。新たな抗生薬も開発されるはずですが、病原体もまたさらに変異して生き延び、さらに強毒になったりもします。人類のために病原体と闘ってくれる抗生薬という限りある“未来への贈り物”を後生に有効に引き継いでいくためにも、必要と思われる時に診断名に合った抗生薬を必要な期間だけ使い、不必要と考えられる場合には使わない、漫然と使わないといった抗生薬の適正使用が望まれます。

投稿者 staff : 13:16

2017年10月17日

未来への贈り物

厚労省健康局から『抗微生物薬適正使用の手引き(第1版)』が出されました。“抗微生物薬”という単語は聞き慣れないと思いますが、抗生薬とか抗生剤、あるいは抗生物質といった方が一般的かもわかりません。1928年、フレミングが青カビから発見したペニシリンが世界最初の抗生薬です。今からわずか約90年前のことになります。その後は本当に多くの抗生薬が開発されて、感染症の治療や患者さんの生命予後の改善に大きく貢献してきました。

しかし、薬には効果とともに、必ず副反応(副作用)や有害な現象(専門用語では有害事象)があります。もちろん、薬によって副反応や有害事象が多い、少ない、重症なものや軽症のもの、いろいろ程度は異なります。しかし、薬には良い面だけでなく悪い面が存在することを、処方する医療者側も実際に飲んだり点滴を受けたりする患者さん側も、常に念頭に置いておく必要があります。薬というものは、効果が副反応や有害事象を大きく上回る場合に使われるべきものです。ところが最近では、抗生薬の過剰使用などによって抗生薬が効かない菌や効きにくい菌、いわゆる薬剤耐性菌が増えてきているという弊害が出ています。ニュースなどでも、耐性菌による院内感染の報告などを目にされた方も多いと思います。

一昔前には「念のために抗生薬を出しておきます」という言葉をよく耳にしました。僕が研修医だった頃にも、熱が出たら取りあえず抗生薬と解熱薬・・・といった指導があったようにも思います。でも実際のところ、子どもの発熱を伴う感染症の原因の多くは細菌以外の原因、つまりウイルス感染が多いのです。ウイルスには抗生薬は無効ですが、日本では“かぜ”でも抗生薬が処方される場合が多いのが実情で、とくにβ-ラクタム系というグループの薬が多い傾向にあります。広範囲に有効な抗生薬はさらに耐性菌を生んでしまう弊害があります。

このまま抗生薬が明らかな理由もなく漫然と使われ続けていくと、さらに抗生薬耐性菌が増え、将来的に困った状況に陥る可能性があります。『抗微生物薬適正使用の手引き(第1版)』の文章を引用させていただくと、「不適正な抗微生物薬使用に対してこのまま何も対策が講じなければ、2050年には全世界で年間1,000万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されている」とあります。
もちろん、抗生薬が必要と思われる病気や疑わしい状況下にある場合に使うのは当然のことです。その一方で、不必要と思われる抗生薬を安易に漫然と使わないようにして、抗生薬の有効性をなるべく維持していくということは、子どもたちや孫の世代などの健康を守る、大切な“未来への贈り物”でもあります。

投稿者 staff : 13:49

2017年10月02日

もう先天性股関節脱臼とは呼ばない?

乳児健診などで時々「太ももの皺が左と右で違うのですけど大丈夫でしょうか」と聞かれることがあります。先天性股関節脱臼の特徴の一つに、大腿部の皺の左右差が言われているので、それを心配されての質問です。先天性股関節脱臼は以前に比べると確実に減ってきていますが、股関節の代表的な病気の一つであり、女児に多い傾向があります。骨盤位分娩、いわゆる逆子で生まれた場合にも多い傾向があるようです。

しまし、最近では先天性股関節脱臼と言わずに、『発育性股関節形成不全』と呼ばれるようになってきました。股関節脱臼には家族性があって、近い親族に股関節脱臼があれば起こりやすくなります。言い換えれば、股関節が脱臼しやすい、緩くなりやすいという家族的な因子が関係しています。その意味では、従来通り『先天性股関節脱臼』と言っても正しいのかもしれません。しかし、それ以上に、生まれてからの足の姿勢が大きく影響しているので『発育性股関節形成不全』という病名が主流になってきているわけです。

股関節脱臼になりにくい理想的な足の姿勢は、両足がアルファベットのM(エム)の形になっている状態です。つまり、両足を曲げにくい状態を長く続けてしまうことが危険因子と言えます。よくないことをいくつかあげると、両足をオムツや衣類で締め付け過ぎる状態、両足をまとめて抱っこするような姿勢や育児用品といったところです。オムツを当てたり衣類を着せたりする時には、両足をM字の形に曲げる余裕があるかどうか、確認してあげてください。抱っこでは、足を広げてお尻を大人の手で支える形、いわゆる『コアラ抱っこ』が勧められています。抱っこひもの使用も問題ありませんが、両足を閉じる姿勢になりやすい横抱き用のスリングなどは要注意です。

向き癖があれば、その反対側の足の姿勢に注意します。たとえば、右の向き癖のある赤ちゃんの左足が立て膝状態なっていれば、股関節脱臼を誘発してしまうことがあります。向き癖のある反対側から語りかけたり授乳したり、バスタオルなどを利用したりして工夫してあげてください。女児、家族性、向き癖や足の皺の左右差、骨盤位分娩などが脱臼のリスク要因ではありますが、3〜4か月健診あたりで発見できればと思います。そのためにも乳児健診は是非受けて欲しいと思います。

投稿者 staff : 13:52

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